ビジネスマンのファッション:おっさんの変遷(変節?)
おっさんは10代のころからロックンロールを真剣に聞いていました。それも社会不適合者的な奴。それで、服装は自分の主義主張のステートメントだと思っていました。ベースの考え方は年をとってもそんなに変わっていませんが、主義主張の表し方は年齢とともに変わってきます。今回はそんなおっさんのビジネスにおけるファッションの変遷を書いてみたいと思います。
20代
ロックンロール好きではありますが、いえ~い!という感じの陽性ではありません。もちろんビートルズ、ストーンズなどから始まってヒット曲も聴いていたのですが、英国パンク、ニューヨークパンクなどの反抗の音楽、しかもちょっと陰気に反抗するバンドにシンパシーを感じていました。学生時代の服装は、ガレージパンク的というか、要するにTシャツにジーンズの汚い恰好をしていました。
就職してからも特に嗜好は変わりません。幸いに研究職だったので、通勤時のドレスコードはほぼなし(さすがに短パン、サンダルはまずいかという程度)、会社の中では作業着に着替え、実験室では白衣を着てなので、学生時代とほとんど変わりませんでした。
結婚してからもそれは変わりません。Tシャツ、ジーンズに、寒くなったらスウェット、更に寒くなったらダウンジャケット。ごくシンプルです。靴はスニーカー、鞄はナイロンの肩掛けバッグ、ブランドなんて知ったことかという感じです。
スーツは年に1,2回切るかどうか。大学入学時、成人式、大学卒業時に両親から買ってもらったスーツを着ていました。たまにスーツを着ていると、会社の先輩から「なんだか学生みたいだね」と言われることがありました。当時は若々しいという誉め言葉かと思っていましたが、今となるとちょっと違うかもと思います。
いずれにしても身に着けるものは安くてシンプルなものでよいのだ。要は裸になった自分の考え方の筋が通っていることが大切なんだという考え方でした。高価なものを買うよりも、本とか音楽とか、自分へのインプットにお金を使うのだ、そんな気持ちでした。
30代
父親になって、30代になっても特に考え方は変わりません。ただ1990年代の終わりごろでしょうか、ユニクロのフリースが出てきたころから、少し機能性を意識するようになりました。いろいろな機能を持った生地が開発されだしたのがこのころでしょうか。
夏場だったら吸湿速乾とか、冬は発熱とか、防水透湿のGoretexとか。研究者魂でしょうか。どうもこういうのに弱いのです。
そんなわけで、どうせ買うのだったらスポーツブランドとかアウトドアブランドの機能性をうたった服装に惹かれるようになります。それでもノースフェイスとかパタゴニアとかは高いですからね。ナイキとかアディダスも結構高かったと思います。それでミズノとかアシックスとか、時々安売りになるコロンビアとか、そういうのを通勤着として使うようになりました。
スーツは相変わらずです。スーツの違いなんて全く分かりませんし、そもそも自分でスーツを買ったこともないのですから。靴も黒くてスニーカーでなければよいだろうというかんじ。
40代
結局、44歳で研究職を離れるまで、服装は変わりませんでした。スーツを着ているときに、上司から「肩パットがすごいね。それはバブル時代のスーツだね」と言われたことがあります。あれ、そういうものなの?と自分のスーツに少し疑問を持つことはありました。
40代半ばに、別の会社に出向になり、デスクワーク中心の仕事になりました。毎日スーツを着て通勤することになりなす。ここにきて上司に言われていたことが気になります。さすがに学生時代のスーツではまずいのかな。こう思って、デパートにスーツを見に行きます。ちょうど催事場でメンズファッション市をやっていて、スーツが2着で2万円くらいで売っています。これ幸いと、催事場のおばちゃんに見繕ってもらって、黒と、黒に青ストライプの2着のスーツを購入しました。
靴も革靴が必要です。機能性が一番という気持ちがありますので、ヨネックスのサイドジッパーのついたウォーキングシューズ(パワークッション入り)を購入しました。一応、本革です。
時計は少し前に買っていた、Wave Ceptorです。
さてこれで文句ないだろうと新しい職場で仕事を始めました。実際、特に問題はなかったのですが、少しファッションに感度が上がってきていますので、webで見かけるファッション関係の記事が目に留まるようになります。ちょうどそのころ日経ビジネスオンラインでサラリーマンファッションについての連載があり、スーツの揃え方、サイズ感、シャツ、ネクタイの選び方などを読みました。それと照らし合わせてみると、自分の今の格好は随分と基本路線を外しているのだなあということが分かります。
ビジネスファッション意識の高まり
そんな知識が身についてくると、自然と自分の周囲の方々のファッションに目が行くようになります。するとこれまで気づかなかったことに気付くようになります。ああいい時計だなあとか、いい靴だなあとか。結構みんな気を使ってお金かけてるんだなあ。
スーツにしても、会社が入っているビルにオンワードの方が来て、オーダー会なんてやっているのを知ります。恐る恐る行ってみると、結構たくさんの方が生地を選んでいます。採寸している人もいる。スーツって普通のサラリーマンでもオーダーして作るんだあ・・・と初めて知りました。以前、山口瞳さんの随筆で「スーツを作りに行く」という表現があって違和感を持っていたのですが、そういうことなのね。
さらに、新しい仕事ではベンチャー企業の立場で資金調達するようなこともありました。そうすると大手銀行、投資銀行、ベンチャーキャピタルなどに行って、自分たちのことをアピールしてお金を引き出すということが必要になります。行くのは大手町の高いビルのしかも高層階です。そういったところで出てくる人たちの服装が、記事で読んでいたことと一致しているのですね。袖先からちらりとシャツが見えて、ボタンはカフスボタンで、ネイビーかグレーのスーツで、ストレートチップの靴で、高そうな時計で。
もともとお金を借りに行っているので、少し下手に出るところがあるのですが、その心境で服装の違いまで見せつけられると、ちょっと圧倒されるような感じがありました。こういうところでビジネスをするなら、もう少しちゃんとした格好をしないと、気持ちで負けてしまうなと。
そりゃ、ロックンロール魂によれば、服装なんて関係ないだろう、何を考えているか、何を達成しようとしているかで勝負だろう、ということになりますし、スティーブジョブズとかホリエモンとか、それを地で行っている人もいました。ただ自分はその器ではないなと。
というところから、そんなに高価でなくてもいいから、きちんとした格好をしようという考え方になりました。きちんと作られたものを、きちんと手入れして使おうと。
まとめ
今回は、20代で就職してから、40代半ばでちゃんとした格好をしようという考えに至った変遷をご紹介しました。次回以降に、個々のアイテムについて紹介しようと思います。