雪山遭難とPDCA②:Plan=目的+目標+行動方針
雪山で遭難した軍隊が、間違った地図を頼りに下山した事例を題材に、この事例ではPDCAがうまく回っていたのではないかという記事を書きました。今回はPDCAのPについて、もう少し掘り下げたいと思います。
Planに必要な要素
雪山から地図を頼りに下山しようとするときに、この集団の目的は「全員が無事に下山すること」になると思います。
では目標はどうでしょうか?この山の深さや、集団の人数などの条件によって目標は変わることになると思います。例えば、
・ 1日で、全員で下山する
・ 2日かけて、全員で下山する
・ 先発隊が下山し、救助隊を連れて戻ってくる、など。
そしてこの目標に応じて、行動指針が決まってくると思います。例えば、
目標 :1日で、全員で下山する
行動指針:一日で下山するための最低限の装備を持っていく
役割分担を決める
・ 先頭で雪を踏み固める係
・ 地図を読む係(時には様子見に偵察に行く)
・ 荷物を運ぶ係(先頭隊や偵察隊の分も荷物を持っていく)
・ 時間管理係、などなど
行軍の時間管理を行い、1日で下山が不可能となった場合には日が暮れる前に野営の準備を行う
目標 : 2日かけて、全員で下山する
行動指針:野営に必要な装備を含めて持っていく
役割分担を決める
・ 先頭で雪を踏み固める係
・ 地図を読む係(時には様子見に偵察に行く)
・ 荷物を運ぶ係(先頭隊や偵察隊の分も荷物を持っていく)
・ 時間管理係
・ 野営地建設係
・ 調理係、などなど
行軍の時間管理を行い、日が暮れる前に野営の準備を行う
目的と目標の違い
「目的」と「目標」。似たような言葉で、その定義というか使い分けについて長年自分の中でしっくりきていませんでした。しかし雪山遭難の事例で考えると腑に落ちるものがあります。要するに「目的」は絶対的、必達であるに対して、「目標」は条件次第、時限的、必要があれば変える、ものなのですね。
ウィキベディアでは次のように記述されています。
目的:成し遂げようとする事柄
目標:目的を達成するために設けためあてのこと
例として次のようなことが示されています。
目的:自他ともに幸福にする人生を全うする
目標:6年以内に看護婦になる
目的は「究極として成し遂げたい事柄・状態」であるのに対して、目標は「それを達成するための定量的・具体的な手段」ともいえるでしょうか。
この例では目的は同じでも、目標は人によって変わりますね。看護婦さんになるという目標を立てる方もいれば、他の職業を目指す方もいるでしょうし、よき父親・母親になるという目標を立てるかたもいるでしょう。
また目的が達せられるまでは、一つの目標が達成できたら、その次の目標を立て続けなければなりません。
雪山遭難でも同じでした。目的は決して変わらないけれど、目標は条件によって様々である。条件が変われば、目標を変更しなければならない。
目的ー目標ー行動指針の一貫性
Planにおいては、目的ー目標ー行動指針が策定され、しかもそれらに一貫性があることが必要ということが分かります。この行動を取ればこの目標が達成され、この目的が達成される。このような一貫性のあるPlanを立てることが必要ですし、この一貫性から外れるような目標や行動指針は立ててはいけないということになります。
雪山遭難での地図はこの一貫性を保つために抜群の効果を発揮したといえるのではないかと思います。集団の全員がこの一貫性に心から賛同し、乱れのないDoにつながったのだと思います。
ビジネスにおいても、このようなPlanが必要なのだと思います。
目的 :その会社が達成したいこと。存在意義。ミッションという言葉で表されていると思います。
目標 :目的を達成するために、期間を限って、定量的に記述された到達点。
行動指針:目標を達成するために、(各部署から)コーディネートされた行動を引き出す指針。
このセットが、会社では戦略と呼ばれるものになるのではないでしょうか。
一般的には企業では、ミッション、ビジョン、バリューという形で、その会社が目指すところが語られていると思います。でも英語を使っていて、私はどうもわかりにくいと思っていました。
それよりも、目的ー目標ー行動指針としたほうが、自分たちがやらないとならないことが一目瞭然となって分かりやすくていいなと思います。
まとめ
今回は、PDCAのPを分解すると、目的ー目標ー行動指針からなっているのではないかというお話をさせていただきました。
集団が優れた成果を出そうとするときには、 目的ー目標ー行動指針が明確かつ一貫しており、自分(自部署)が何をしなければならないかが分かるようにPlanを策定することが肝要と思います。